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拙稿が次のとおり刊行されました。

Tada, Mitsuhiro, 2022, “Culture of Society: The Concept of Culture in the Age of the World Society [A slightly modified English version],” Soziale Systeme: Zeitschrift für soziologische Theorie, 25(2): 277–304.


社会システム理論を中心とした社会学理論研究の専門誌として知られるドイツの Soziale Systeme 誌で、少し前から編集委員会の末席に加えてもらっています。同誌は2019年から3年間ほど刊行がストップしていたのですが、刊行再開を機に編集委員会のメンバーが交代して、当号はその新メンバーによる「編集者号(Herausgeberheft)」です。

この「編集者号」の企画の立ち上がりから締め切りまであまり時間がなかったため、わたし自身は、2011年に日本語で刊行した拙稿「社会の文化――世界社会の時代における文化の概念のために」(『社会学評論』掲載)の英語版を、Soziale Systeme 誌と社会学評論誌の両誌の承諾のもとで寄稿しました。

本英語版作成にあたっては、Author's Note にあるとおり、若干の加筆修正をしてありますが、あくまで2011年刊行の日本語論文の英語版という位置づけなので、自分のものも含めて最新の研究成果は反映させていません。それでも、本稿日本語版については、英語版がないのかと海外から問い合わせがたびたびありましたし、そのサブタイトルが示すとおり、内容面でも時代状況的に意味はあるものと思います。研究予算の都合上、現時点ではオープンアクセスにできなかったのは残念ですが、それはまた予算の目処がついたらまたいずれ。

ともあれ、上述のとおりあくまで末席の編集者ですが、Soziale Systeme 誌ならびに社会学の理論研究発展のためにがんばりますので、再開した本誌ともども、みなさま何卒よろしくお願い申し上げます。





The PDF file of the paper-printed version of my article “Language and Imagined Gesellschaft: Émile Durkheim’s Civil-Linguistic Nationalism and the Consequences of Universal Human Ideals” can now be downloaded. Previously, the publisher had wrongly uploaded a version without page numbers.

Tada, Mitsuhiro, 2020, “Language and Imagined Gesellschaft: Émile Durkheim’s Civil-Linguistic Nationalism and the Consequences of Universal Human Ideals,” in Theory and Society, 49(4): 597-630.
https://link.springer.com/article/10.1007/s11186-020-09394-1

ちなみに上記リンク先には、過去2回の修正の記載がありますが、これらも出版社側のミスによります(苦笑)。




昨年度(2021年度)の社会調査実習で制作した報告書『大学進学と社会――大学への不本意入学経験者の意識と実態に関する調査報告書』を、PDFファイルで、拙サイトの Research にアップロードしました(ファイルの直リンはこちら)。

大学全入時代を目前に控え、なおメリトクラシーの受験競争に参加していき、そして残念ながら第一志望の夢かなわずに不本意入学をした二十代の方々(主に既卒や中退の社会人等)へのインタビュー調査の報告書です。とても面白いテーマであり、メンバーシップ主義の日本社会の一端が垣間見える内容だと思います。

わたしも長めの序文「『敗北』を抱きしめて――大学全入時代の不本意入学」を寄せています。
そこでこのテーマの設定の経緯と狙い、そして社会背景を論じています。

学生たちもよく頑張って作ってくれた力作ですので、どうぞご笑覧ください。


編集後記はこちら




公私ともに日々慌ただしさを増していることもあって、じつに1年ぶりのブログ更新です。あまりに久しぶりすぎて、どうやって新しい記事を書くのか、いっしゅん分からなくなっていました。

2021年度は3名の卒業生をゼミから送り出しました。
長引くコロナ・パンデミックもあって後期のゼミも卒論発表会もすべてオンラインでの実施となりましたが、卒業式の日には久しぶりにじかに元気そうな顔を見ることができてよかったです。卒業生のなかには、コロナ危機で昨年度予定の海外留学が中止となり、卒業を延期して再度渡航が許可されることに懸けたものの、パンデミック収束とならず、残念ながら果たせなかった者が昨年度につづいております。本当に悔しいかぎりですが、準備をした以上はまたきっと必ずチャンスが巡ってくるはず。焦らず腐らずその機会を待ってほしいと願います。

また卒業論文も、このコロナ渦で調査などが著しく制約されるなかで、三者三様、力作でした。いずれも例年にないユニークな問題設定であり、なかには、中国語の資料を使ったものや、また、アメリカの雇用統計(英語)を駆使して経済学での議論にまで踏み込んでたいへんな力業でまとめきった最大8万字オーバーの作品もあり、教員のほうが勉強になったくらいです。

そうこうするうちにコロナ渦どころか戦争(ロシアによるウクライナ侵攻)まで始まり、平和や安定がほんとうに束の間の例外でしかなかったと言わざるを得なくなっています。また社会構造的にも、先進国の国民の大きな部分が経済的繁栄を享受できた時代は過ぎ去り、まさに今年度1年かけて読んだサスキア・サッセン『グローバル資本主義と〈放逐〉の論理――不可視化されゆく人々と空間』も示すように、リスク社会という言葉で表現するには生やさしいほど、激動こそが平時という時代ですが、彼女たちの飛躍には大いに期待が持てると思います。大学で得たことを糧に、ぜひ大きくまたたくましく羽ばたいてください。


なお、この時期はとくにヘトヘトで、もうひとつブログに書き忘れていましたが、2021年度担当の社会調査実習の報告書『大学進学と社会――大学への不本意入学経験者の意識と実体に関する調査報告書』が少し前に完成しました。

大学全入時代の到来がささやかれて久しく、また統計上はまもなくじっさいに全入状態となるそうですが、現実には、少なくとも一部の層では受験競争がつづいています。大学を選びさえしなければどこかに必ず入れるのになぜ受験競争に飛び込むのか。こうした疑問のもと、不本意入学を経験した現在20代で学部既卒もしくは中退(予定)の方々16名を対象に、インタビュー調査を実施しました。じっさいのところ日本社会のメンバーシップ主義では、どの大学学部に入ったかが人生で付いて回りますが、それだけに不本意入学を経験された方々の語りからは、現代日本における学歴(学校歴)と大学の意味が明らかになると考えました。

じつのところ、日本社会における不本意入学者の数というのは膨大なはずなのに、わたしの知るかぎりそれをテーマにした研究は限られており、またあっても多くは、在学中の学生対象で、とくに計量的な研究だと思います。これに対して今回のわれわれの研究では、就職活動時や社会人となってから学校歴(不本意入学のそれ)がいかなる意味を人生で持っているかも視野に収めるべく、おもに既卒者や中退者へのインタビューとして実施しました。

コロナ渦により、実査はすべてオンライン(Zoomによるビデオ通話)で実施しました。またそれどころか、上記ゼミ同様、後期授業もすべてオンラインでの実施となり、意思疎通の面も含めてさまざまな困難がありましたが、みなさんよく頑張ってくれたと思います。収集したインタビューデータは文字数にして78万字に達し、そのすべてを分析して書かれた論文14本はいずれも12000~16000字と、たいへんな力作です。

当報告書のPDF版は本年7月頃にわたしのサイトで公開予定です。
まずは調査にご協力いただいた16名のインフォーマントの皆さま、またプリテストを手伝ってくれた本社会人間学コース卒業生3名の方々に深く御礼を申し上げるとともに、受講生の皆さんの労を心よりねぎらいたいと思います。残る学生生活、入口よりも出口を大事にして、ぜひ有意義に過ごしてください。


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 2020年度、6名の個性的な面々を当ゼミから送り出しました。
 ご存じのとおり今年度は、コロナ・パンデミックにせいで、例年ゼミの学習内容とシンクロさせて実施してきたフィールドワーク合宿が不可能になりました。またバーベキューや蒸し牡蠣を食べる会など、その他のイベントも軒並みできず、さらに、大学としての正規の卒業式さえもなく、非常に悔しいかぎりです。とりわけ今年度の卒業生のうち、2人はコロナ・パンデミックのせいで交換留学の途中にして断念して帰国せざるを得なくなり、またさらに他の2人は、同じ理由により、交換留学自体が不可能になりました。
 ただそれでも、たくましい彼・彼女たちは、切り替えて、それぞれに就職や進学など新しい目標を見つけて邁進してくれました。またゼミの学習についても、フィールドワーク合宿こそできなかったものの、コロナ危機にかぎらず世界中で人種問題や政治問題が噴出したこの1年間のアクチュアリティ、そして学術的分析としての普遍性との双方を意識して、そのつど教材を選び、それをみなで集中的に読み込むことで、この激動の年の諸々の出来事にいかなる社会背景があるかを、深く理解することができたと思います。卒業論文も、海外で質的・量的双方の調査を実施したものをはじめ、全員が4~6万字の量の、ひじょうに高い水準のものを仕上げてくれました。
 また、すでに当ブログで書いたとおり、ラッパーのゼミ生たちから示唆を受けて、前学期は「ラップと社会」がテーマとなり、わたしも大いに学びました。ラッパーとしての彼らの創造的、かつプロと言っても過言ではないほどのハイクオリティな活動の数々も、大変な刺激となりました。
 コロナ危機のせいで失ったものもあるかもしれませんが、代わりに得たものもきっとあるはず。例によってゼミ生同士の仲も良く、結果、楽しい1年間でした。書きたいこと、書くべきことは尽きませんが、年度末のあまりの激務に、このブログ記事を書くのが年度をまたいでしまったので、まずはこのあたりで。
 最後に、卒業生のみなさんたちのさらなる活躍を、心から期待しています。ぜひ勇気をもって新しい世界に一歩踏み出してください。本当にユニークで、かつたいへん優れた面々でした。

<補足>
以下、ゼミ内ラッパーの最新の作品等が視聴できます。お世辞抜きで、本当によい楽曲ばかりで驚くと思います。ぜひご視聴ください。

1) Tada’s Papas(ゼミ内ヒップホップユニット)
    https://soundcloud.com/tkrrrr

2) TAKLO(Tada’s PapasのメンバーTAKLO君のソロプロジェクト)
    https://soundcloud.com/user-3723441

3) MIYAGAWA(ゼミ生TAKLO君が参加するヒップホップユニット)
    https://www.youtube.com/channel/UCf76ELK0t0UDnlyMxFpSjiA

4) MIYAGAWA 1stアルバム『みんなの唄』リリースパーティ&ライブ開催予告
    https://www.youtube.com/watch?v=uWpu3GJd4PY


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