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ノーベル賞の南部先生「世界で最も影響力のある百人」に

【ニューヨーク=白川義和】米誌タイム(電子版)は、毎年恒例の「世界で最も影響力のある100人」を発表した。

 政治や芸術、スポーツなど各界の代表的な人物計100人を選んでおり、「科学者」部門では、2008年ノーベル物理学賞受賞者の南部陽一郎シカゴ大名誉教授(88)が入った。

 「指導者」部門はオバマ米大統領、クリントン米国務長官、サルコジ仏大統領らが選出された。「英雄」部門では、今年1月、ニューヨークのハドソン川に旅客機を不時着させ、乗客・乗員の命を救ったチェスレイ・サレンバーガー機長(58)、ケガから復帰したゴルフのタイガー・ウッズ選手のほか、ミシェル・オバマ米大統領夫人も名を連ねた。
(2009年5月1日20時04分 読売新聞)
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http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20090501-OYT1T00888.htm

いま日本に一時帰国されているそうです(大阪大ですね)。
ご縁あって数年前にお会いしたことがあります。その後も折につけご連絡をさしあげたりメールをいただいたりしていましたが、いまや日本中に顔と名前の知れてしまった時の人ですから、もういちど直接お会いするのはなかなか難しいかもしれません。

それはともかく、分野こそ大きく違いますが、理論的探究という点で、根本的に新しい着想を生み出すのに必要とされる資質は、宇宙物理学も理論社会学もかなり共通していると感じています。じっさい彼がすでに以前からノーベル賞級とされるアイデアをいくつも発表しながらも受賞がここまで遅れたのは、要するに彼のやっていることが、いわゆる物理学というよりは宇宙の原理に関する一種の思想だからだと言う人もいます。

じつは高校時代の前半期、わたしは宇宙物理学を学びたいと思っていたのですが、ふと宇宙も社会も本質的に問題となる事柄は変わらないだろうと思い、それなら経験的に検証しやすい社会のほうをと、こちらの道に進みました。その直感は正しかったと思っています。まあ実際には、ロジックを積み上げて理論予測を示しその当たり外れや蓋然性がのちに明確に判明していくあちらのほうが、少しうらやましく感じますが。「知の欺瞞」もないですし。

ともあれわれわれ日本の社会学者は、もし仮に社会学にノーベル賞があったところで日本の理論社会学者で受賞しうる人は皆無だと断言せざるを得ない厳然たる事実を、重く受け止める必要があります。たしかに思想分野における言語障壁は欧米人に比べて決定的に不利ではありますが、それ以前に、舶来思想の上澄みをすすって満足してしまうという、理論というものに対する根本的なメンタリティの差こそが最大のネックになっています。だから日本の理論社会学者は、諸概念の輸入には一生懸命ですが、そして実際そうした小難しい諸概念を使いたがりますが、そもそも何が社会学理論の基本問題かを国際的な水準で共有していないどころか、共有していないという事実それ自体に気づいていない人がじつは少なくないようです。

概念の表面的な翻訳に傾注した明治以降の日本の近代化の仕方がいまだにここに反映されています。日本で国際学会とか国際シンポジウムを開催しましたとか、海外で英語で学会発表してきましたとか、そういうこと自体を偉いとかすごいとかと感じてしまう人には、もう社会学のノーベル賞はありません。言語能力とかプレゼン能力とかは、それはそれで重要ですが、あくまで手段であって思想の本質ではないのです。それらを自己目的化するのは本末転倒と言わねばなりません。逆に「オリジナルな理論」と称して、社会学史上のどの問題につながっているのか分からない、ただ本人の妄想と自己顕示欲を満たすだけの、概念のつぎはぎによる意味不明なものを作っても、やはりノーベル賞はないでしょう。

グローバリゼーションの時代だからこそ、日本の社会学理論研究は、言語能力等々の問題によってではなくそもそもの中身のなさで淘汰される可能性があります。本当に焦るべきはこちらの点でしょう。

南部さんがどういう信条のもとに理論研究に取り組んできたのかは、社会学の理論家にとっても無関係ではありません。


  
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