fc2ブログ
  

公私ともに日々慌ただしさを増していることもあって、じつに1年ぶりのブログ更新です。あまりに久しぶりすぎて、どうやって新しい記事を書くのか、いっしゅん分からなくなっていました。

2021年度は3名の卒業生をゼミから送り出しました。
長引くコロナ・パンデミックもあって後期のゼミも卒論発表会もすべてオンラインでの実施となりましたが、卒業式の日には久しぶりにじかに元気そうな顔を見ることができてよかったです。卒業生のなかには、コロナ危機で昨年度予定の海外留学が中止となり、卒業を延期して再度渡航が許可されることに懸けたものの、パンデミック収束とならず、残念ながら果たせなかった者が昨年度につづいております。本当に悔しいかぎりですが、準備をした以上はまたきっと必ずチャンスが巡ってくるはず。焦らず腐らずその機会を待ってほしいと願います。

また卒業論文も、このコロナ渦で調査などが著しく制約されるなかで、三者三様、力作でした。いずれも例年にないユニークな問題設定であり、なかには、中国語の資料を使ったものや、また、アメリカの雇用統計(英語)を駆使して経済学での議論にまで踏み込んでたいへんな力業でまとめきった最大8万字オーバーの作品もあり、教員のほうが勉強になったくらいです。

そうこうするうちにコロナ渦どころか戦争(ロシアによるウクライナ侵攻)まで始まり、平和や安定がほんとうに束の間の例外でしかなかったと言わざるを得なくなっています。また社会構造的にも、先進国の国民の大きな部分が経済的繁栄を享受できた時代は過ぎ去り、まさに今年度1年かけて読んだサスキア・サッセン『グローバル資本主義と〈放逐〉の論理――不可視化されゆく人々と空間』も示すように、リスク社会という言葉で表現するには生やさしいほど、激動こそが平時という時代ですが、彼女たちの飛躍には大いに期待が持てると思います。大学で得たことを糧に、ぜひ大きくまたたくましく羽ばたいてください。


なお、この時期はとくにヘトヘトで、もうひとつブログに書き忘れていましたが、2021年度担当の社会調査実習の報告書『大学進学と社会――大学への不本意入学経験者の意識と実体に関する調査報告書』が少し前に完成しました。

大学全入時代の到来がささやかれて久しく、また統計上はまもなくじっさいに全入状態となるそうですが、現実には、少なくとも一部の層では受験競争がつづいています。大学を選びさえしなければどこかに必ず入れるのになぜ受験競争に飛び込むのか。こうした疑問のもと、不本意入学を経験した現在20代で学部既卒もしくは中退(予定)の方々16名を対象に、インタビュー調査を実施しました。じっさいのところ日本社会のメンバーシップ主義では、どの大学学部に入ったかが人生で付いて回りますが、それだけに不本意入学を経験された方々の語りからは、現代日本における学歴(学校歴)と大学の意味が明らかになると考えました。

じつのところ、日本社会における不本意入学者の数というのは膨大なはずなのに、わたしの知るかぎりそれをテーマにした研究は限られており、またあっても多くは、在学中の学生対象で、とくに計量的な研究だと思います。これに対して今回のわれわれの研究では、就職活動時や社会人となってから学校歴(不本意入学のそれ)がいかなる意味を人生で持っているかも視野に収めるべく、おもに既卒者や中退者へのインタビューとして実施しました。

コロナ渦により、実査はすべてオンライン(Zoomによるビデオ通話)で実施しました。またそれどころか、上記ゼミ同様、後期授業もすべてオンラインでの実施となり、意思疎通の面も含めてさまざまな困難がありましたが、みなさんよく頑張ってくれたと思います。収集したインタビューデータは文字数にして78万字に達し、そのすべてを分析して書かれた論文14本はいずれも12000~16000字と、たいへんな力作です。

当報告書のPDF版は本年7月頃にわたしのサイトで公開予定です。
まずは調査にご協力いただいた16名のインフォーマントの皆さま、またプリテストを手伝ってくれた本社会人間学コース卒業生3名の方々に深く御礼を申し上げるとともに、受講生の皆さんの労を心よりねぎらいたいと思います。残る学生生活、入口よりも出口を大事にして、ぜひ有意義に過ごしてください。


220325_Abschluss01.jpg220325_Abschluss02.jpg
220325_Abschluss03.jpg220325_Abschluss04.jpg

■ウェブアップ用_サムネイル2021_thumbnail

  
コメント
コメントする









       
トラックバック
トラックバックURL
→http://balkantraveler.blog7.fc2.com/tb.php/247-4b75b97b
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)