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以下のとおり拙稿が、とりいそぎオンラインファーストで刊行されました。

Tada, Mitsuhiro, "How Society Changes: Sociological Enlightenment and a Theory of Social Evolution for Freedom," in: The American Sociologist.
https://link.springer.com/article/10.1007/s12108-020-09464-y


本稿の元になったのは、2年前に甲南大学で開催された日本社会学会大会のシンポジウム「自由と秩序の社会学理論」に登壇した際の拙発表「社会が変わるには--自由の社会進化論によせて」です。(そのときの「発表後記」はこちら)。

じつは発表原稿はその時点でほぼ完成稿だったのですが、とくに公刊する先もなく(公刊先を探しもせず)、ついついそのまま長らく「塩漬け」にしてしまっていました。じつは当初の草稿がかなり長大なものになっていたため、いっそ書籍にしてしまおうかなと思ったというのもあります。

が、この内容、海外にも問う意義があるんじゃないかなとふと思い立ち、それなら(まずは)論文として公にしておこうと考え、ここさいきんの世界情勢についても加筆しつつ英語にし、今回の刊行の運びとなりました。


じつは本稿は、時間に関するこれまでの拙研究からの展開でもあります。もともと博士論文執筆に至るまでのあいだに、本稿の核となるアイデアはあったのですが、それはまた別の機会に論じようと思って放置していたのが、上述のシンポジウムに登壇することになったのを機に、具体的なかたちをとることができました。さらに今回、英語論文にするにあたって、英語圏の社会学者にあまり馴染みのないであろう箇所を補強すべく理論的な部分を加筆したおかげで、日本の読者にとってもより分かりやすくなったと思います。

また本稿は、一種の「社会学論」でもあります。規範論が好きな人は社会学者にも少なくありませんし、こういう時代だからなお新たな規範が求められているという人もいるでしょうが、本稿はその逆に、むしろ逸脱を増幅することで個人的自由を目指すことを社会学のいわば「公共的使命」と位置付けました。そのために、デュルケム、(ベルクソン)、シュッツ、ルーマンが、どのように内在的につながっているかを示し、また、ハーケンやアーサーらのシステム理論的概念も適宜使用しながら、しかし、可能なかぎり平易な仕方で新しい洞察を示すことができたと思います。


このような本稿、そもそも放置せずにもっと早くに出版しておくべきだったかな、と思う気持ちもないわけではありませんが、結果的には塩漬けしていたおかげで、世界のこのコロナ危機ならびにその他諸々の混乱や問題を論文内で踏まえることができ、よかったかなと思っています。

また、アメリカン・ソシオロジスト誌に投稿したのはいろいろなたまたまが重なったからですが、アメリカ大統領選を約10日後に控えたこのタイミングで、「アメリカの社会学者」をタイトルに掲げる伝統ある学術雑誌から出せたのも、僥倖でした。さらに、海の向こうのあちら側だけでなく、こちら側の日本学術会議をめぐる問題なども考え合わせると、自由をめぐる本稿の内容は、本当にアクチュアルかつタイムリーなものだと思います。

このようなわけで、本稿が、理論研究者だけでなく広く社会学者一般の方々に読んでもらえるといいな、と強く願う次第です。そう考えて、思い切って人生初のオープンアクセス論文としてあります。英語も例によって平易です。


どうぞご笑覧いただければ幸いです。