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本日5月15日の朝日新聞「よみたい古典」は宮沢章夫による『資本論』の紹介。そもそもリンネルが分からないとか、エレって何だよとか、かなり好き放題に言っていて笑いを誘います。私もそういうことでいいと思います。


この3~5月にかけて、以下3本ほど、わたしの執筆した論文が公刊されましたので、ご紹介します(リンク先の公式サイトに最新号情報がまだ反映されていない場合がありますのでご了承ください)。


1)「一種独特の実在としての社会システム――モノから主体への転回に向けて」『現代社会学理論』日本社会学理論学会,5: 89-100.

この論文は、デュルケムと社会システム理論に関する理論的な研究論文で、アブストラクトは下記の通り。
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【要約】社会を「一種独特の実在」とするエミール・デュルケムは、通常、創発主義的なマクロ社会学理論の代表的な人物と考えられている。だが彼の社会実在論的な主張の手がかりとなったのは、じつは個人心理学であった。彼は、意識の特性が脳生理学には還元できないこととの類比で、社会は個人には還元できないと考えたのだった。ただ彼の場合、類比以上の適切な裏付けは欠けていた。ニクラス・ルーマンによって展開された自己準拠的な社会システムの理論が、創発主義に理論的基礎を与えうる。コミュニケーションからコミュニケーションへの接続という社会システムの自己準拠性の指摘は、社会的水準の還元不可能性を明確にした。もともと自己準拠概念は意識哲学的な伝統を含んでおり、自己準拠的な社会システムの構想も、意識に関する知見を社会的領域に一般化した帰結だと考えられる。ただデュルケムとは違い、このシステム理論は意識哲学的な認識論までも社会システムに適用し、社会システムが固有の環境を独自に認識する主体だとしている。そのためこの理論は、デュルケムが社会を存在論的表象のもとで「モノのように」観察したのとは異なり、社会システムを自律的な観察者として観察するという認識論的課題を掲げている。社会システムとはいわば一種独特の観察者だということである。
キーワード:ニクラス・ルーマン、エミール・デュルケム、社会的実在
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一般の社会学者の方には、社会学史的にあまり知られていない事実として、この要約にも書かれていますが、次の2点がとくに興味を惹くかもしれません。

① エミール・デュルケムの有名な「一種独特の実在としての社会」という主張に示される彼の社会実在論が、じつはウィリアム・ジェイムズらの「意識の流れ」といった心理観からの類比によること。

② 自己準拠的な社会システムという構想は、通常は、サイバネティックスや一般システム理論といった自然科学の系譜に源泉が求められるが、じつは自己準拠概念は意識哲学の伝統を含んでおり、それが自然科学および社会科学に一般化されたのであること。



2)「存在から生成へ――ゲオルク・ジンメルと社会システムの存在論のための予備的考察」
『ジンメル研究会会報』ジンメル研究会,16: 1-15.

昨年7月に開催されたジンメル研究会2010年度大会での報告論文です(当日の様子についてはこちら)。
本論文では、ジンメルの「社会化(Vergesellschaftung)」という、たぶん多くの社会学者が知ってはいながらもじつは内実をあまりよく掴んでいない概念を、「社会になっていくこと」として定義しました。ジンメルにとって社会とは、それ自体で「社会であるもの」ではなく「社会になっていくこと」、つまり、存在ではなく生成だということです。

なお本論文は、大会当日の報告内容に大幅に加筆してありますので、大会報告をご静聴くださった皆様もぜひご一読いただければと思います。とくに後半部分では、あまり言及されることのない彼の論考も掘り起こしながら、ジンメルの時間論を詳細に追っていますから、ぜひご覧ください。

本論文は、PDFファイルにて本サイトにて公開してあります。スキャニングで取り込んだので、やや掠れやズレがありますが、ご容赦ください(ダウンロードはこちら)。
加筆ならびに公開をご快諾くださった事務局の杉本学様(熊本学園大)に、心より感謝を申し上げます。また、大会当日にいっしょにご登壇された馬場靖雄先生(大東文化大)、杉本様とともにコメンテーターとして拙報告にご意見をくださった渡会知子さん(ミュンヘン大)、司会の菅野仁様(宮城教育大)、その他、コメントを寄せてくださった皆様に、あらためて御礼を申し上げます。



3)「<調査実習事例報告>東京の地方出身者を調査する――東洋大学社会学部社会学科イブニングコースでの調査実習」『社会と調査』一般社団法人社会調査協会,6: 77-81.(有斐閣サイトはこちら

2008年度に東洋大学で担当した社会調査実習の事例報告です。
この調査実習はじつはわたしとしても初めての調査実習であり、とても個性的なメンバーに囲まれながら質・量ともに充実した報告書が完成して、たいへん思い入れのある授業でした(当時の様子についてはこちら)。なので、この事例報告の執筆依頼をいただいたときには、学生たちの苦労が報われたと本当に嬉しかったですし、私個人としても、見てくださっている方は見てくださっているのだなあと、大変な励みになりました。

一般には、学部の調査実習での報告書というと、あまり外部の方々の目には触れることはないのですが、本報告書は国立国会図書館にも献本してあります。また本サイトでもPDFファイルで公開していますので、ぜひご覧ください(ダウンロードはこちら)。

今回あらためて事例報告というかたちで振り返って、しみじみと当時を思い返すと同時に、当時のことを反省するきっかけにもなりました。初調査実習でまだまだ経験の浅いわたくし(しかもご依頼をいただいた時点で非会員)に、このような執筆の機会を与えてくださった一般社団法人社会調査協会の諸先生方に、心より感謝を申し上げます。


使いづらくてショック。
メニューバーはデフォルトでいると思うし、
再読込やホームのボタンの位置が分かりづらい
ユーザーフレンドリーではなくなったような気が。
慣れの問題ではなく。